第20章
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 それから数日が経ち、十一月に入ると、前月以上に冷え込む。


 普通に午前十時には岩原の自宅前まで来て、横付けした。


 俺もさすがに人間だから、ずっと同じことが続くとしんどい。


 だが、政治家のお抱え運転手というのは実にそういった類の仕事だ。


 とにかく心身両面での疲労が激しい。


 一日の勤務が終わればすぐに帰宅し、シャワーを浴びて、帰宅間際に買っていたお弁当などを食べる。


 アルコールフリーの缶ビールを一缶飲みながら、だ。


 日中は緊張状態が続く。


 何せ乗せているのが普通の人間じゃなくて、野党でも大物の政治家だからだ。


 この男の一挙手一投足に全てが掛かっている。


 日本を陰から操る男だと言っても過言じゃないだろう。
 

 秋の臨時国会は真っ只中だ。
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