第21章
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 その日、岩原は国会内の事務所で秘書の蔵橋や中川と協議したらしい。


 今回の二億円の事務所経費問題を、である。


 マスコミも、その報道を伝え聞く国民もなかなか納得しないのだ。


 俺も分かる気がした。


 岩原にとって、子分を養うのにそれぐらいの金じゃ到底足りないということも、だ。


 だが、なぜ川浪と袂を別ったのか……?


 仮に川浪率いる新民党にいれば、総理になるチャンスもあったのに。


 それがこの男に対して感じる訝しさなのだった。


 国民は皆、納得しないままだろう。


 仮に会見をしたとしても、二億の金がどういった経路で闇へ流れたのか、分からないのだ。


 それは秘書でも何でもない俺でも感じ取れる。


 そして岩原の行う会見にはもう一つ、穴があった。
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