岩原が初当選したのは今から三十年以上前の衆院選で、である。


 当時、新民党は与党で、野党の社自党(しゃじとう)とずっと戦い続けていた。


 岩原は初当選時三十五歳で、中堅・若手の間ではホープ的存在だった。


 何せ岩原の父親である宗二(そうじ)はずっと政治家一貫で来ていて、俺も当時のことを知る人間からその手の昔話を聞いたことがある。


 岩原は選挙の際、ドブ板で回ってくる。


 二千人集会を一回開くのではなく、二百人集会を十回開くぐらい徹底した選挙運動をしていた。


 もちろん新民党はずっと一貫して与党にいる。


 その幹事長である岩原が憲政記念館で演説をするという。


 おそらく多数の人間が集まるだろう。


 主に国会議員や地方の県議団、市議団だと思うのだが……。


 八月末で国会は会期中だが、岩原は幹事長で党務の方に専念していたので、国会に出るのは重要法案の採決のときのみだ。
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