一応、藤井のお抱え運転手なので、単なる送迎担当なのだが、いろいろと情報は知っている。


 特に俺も政治の動向などには詳しかった。


 知らない方がいいことまで知っている。


 悪地――悪い知識の意味だが――もたくさん身に付いた。


 人間はシャバにいると、垢に塗れるという。


 俺もそう思っていた。


 藤井を屋島に送り届け、会食中は俺も食事を取る。


 朝買っていた弁当が一つあった。


 食事を取るときは、気が抜ける。


 何もかもを忘れて食べることに専念するのだ。


 せめてこういった時間は憂さを忘れたい。


 スマホは助手席に置きっぱなしにしている。

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