――俺が今保釈されてることは知ってるよな?


「ええ。一切音沙汰なしでしたので、心配しておりました。お変わりはありませんか?」


 ――君が藤井君に仕えてることは知ってる。ただ、いずれ彼は社自党に復党するだろう。今夏参院選があれば、非社自で野党が結束するはずだ。そこで君に頼みがある。


「頼み……と申されますと?」


 ――もう一度、俺のところに戻ってきてほしい。君を雇いたい。議員会館で秘書として働いて欲しいんだ。


「秘書ですか?」


 ――ああ。俺もいずれ裁判で無罪を勝ち取って身辺が片付けば、また衆院選に立候補する。今は社自党が優勢だが、福原が政権運営に失敗すれば、必ずまた新民党が復権する。そこを狙うんだ。


「ですが、なぜ私のような人間が秘書に?」


 ――君が政治に詳しいことは知ってる。俺に長年運転手として仕え続けてきてるから、それ相応に政治に精通してると思う。君が秘書になってくれたら、俺も頼みたいことが山ほどある。


「そうですか。……ですが、先生は一度新民党を見限られたんじゃ?」
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