その折、藤井が言った。


「堀原、君はまさか俺からも岩原先生からも離れていくんじゃないだろうな?」


「ええ、そのつもりですが」


「今まで世話になった人間から離れるなど、恩知らずにもほどがあるぞ」


「ですが、私は今の仕事に納得してませんので」


「そんなに不平不満があるのか?給料だって一般のサラリーマンより多く出してるぞ。それに政党の職員である以上、かなり手厚くしてるから各種保険などにも入ってるじゃないか?」


「納得がいかないんです。残念ですが」


「君を信じた私がバカだったのかもしれないな」


 藤井が軽く息をつき、一瞬のち、


「――やりたいようにやりなさい。ただ、責任は持てないからな」


 と言った。


「分かりました。お暇をいただきますが、それでもよろしいでしょうか?」
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