身の危険は感じるのだった。


 十分すぎるぐらい十分に。


 ずっと尾行されているようで、危なっかしさを感じる。


 ダガーは殺傷能力が高い。


 内田らしい人間がいると思うと、辺りを見渡して、すぐにそこを後にする。


 そんな日を送り続けていた。


 俺の就活まで妨害するのかと思いながら……。


 そして俺にとって人生における最悪の日がやってきたのである。


 品川の街の歩道を人込みに紛れて歩きながら、ふっと感じた。


 後ろからフード付きのウインドブレーカーを着た女がいることを。


 何かしら息遣いまで聞こえてきそうだった。


 獰猛な野獣と同じである。


 獣は同類を殺す際、理性を失う。
< 324 / 328 >

この作品をシェア

pagetop