そして俺も歩を速める。


 ちょうど二メートルぐらい後ろに人影を感じた。


 そのとき背後から、右脇腹に衝撃を覚えたのである。


 ズブッという音がはっきりと聞こえた。


 まるでトマトジュースをぶちまけたように血が溢れ出る。


「うっ、……て、手前――」


 振り返ると、フードを被った女が嘲笑っていた。


「き、貴様……ブ、ブタ箱行きだぞ――」


「そうはいかないわよ。あんたが死ぬことで岩原は破滅ね。これもあるし」


 内田がそう言って一本のフラッシュメモリを取り出し、翳す。


 中にはデータが入っているようだった。


 今回の岩原の愛人疑惑の真相が書き記された資料のようなものが。


「そ、それをこっちに渡せ……」
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