救急医やナースの声が段々と聞こえ辛くなってくる。


 俺にも分かっていた。


 死の瀬戸際に来ていることを。


 そして仮に奇跡的に助かったとしても、植物人間のようになってしまうことを。


 やはり一寸先は闇だ。


 政治の世界でも、そうじゃない場所でも。


 俺も気を張っていたのだが、もうそれも長くは続かない。


 東京消防庁のロゴが入った救急車がサイレンを鳴らし、瀕死の俺を乗せて走り出す。


 逃げ去った内田は多分、傷害の現行犯で逮捕されるだろう。


 俺も運ばれながら、命が尽きようとするまで気にしていた。


 これからの政界の行く末と、今後の日本の行方を。


 そして搬送された病院のICUでの治療も空しく、俺も死んでしまう。


 その後のことは、まるで分からない。
< 327 / 328 >

この作品をシェア

pagetop