「あんたの人生も終わりだね。あたしはまだ先があるけど」


 目の前の女がニヤリと笑う。


 してやったりといった感じで、だ。


 俺もさすがにどうしようもなかった。


 これが人生最後の光景であるということは。 


 そして内田は猛スピードで駅とは反対方向へ逃げ出す。


 全てはこういった終わり方だったんだな。


 まるで岩原や藤井に仕えてきた日々が走馬灯のように駆け巡るのを、担架に載せられて、搬送に使われるため走らされる救急車の中で感じ取っていた。


 仮に俺自身、ICUで一命を取り留めたとしても、内田は逮捕・取調べを経て、裁判で殺人未遂の罪で死刑相当の判決を受けるだろう。


 内田の持っていたフラッシュメモリは逮捕時、所持品として回収される手筈だ。


 ずっと煩悶していた。


 意識が遠くなるのを覚えて。
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