絶対にみちゃダメ!
「いこう、小町。こんなところにもう用は無いから」

 雅は腕を回して、ヒョイとあたしを抱き上げる。

 細いくせにものすごい力で、軽々と抱き上げられてしまった。

 一瞬の事に、抵抗する暇も無かった。

「小町を返せ!」

 虎が拳を握って声を荒らげた。



 ただ事で無い雰囲気に、周りがざわめき始める。

「ちょっと離してよ!」

 あたしは雅の耳元でするどく囁いた。

 ここで大騒ぎしたら雅の正体がばれてしまう。

 この話の流れはまずいけど……虎のペースに巻き込まれそうになっていたあたしとしては少し助かったのもあったから、騒ぐのはよした。




 それに、周りが騒がしくなってきたのが気になっていた。

 目立ちたくない……。

 ここで変に目をつけられたら困る!

 でも、いざとなったら……。


 最後の手段として、あたしはハイヒールを脱いで床に飛び降りて、二人の急所に膝蹴りでも食らわす覚悟だ。





 一触即発の空気が二人の間に流れている。

 バチバチと目線の間に火花でも散っていそうだった。


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