スイートスキャンダル
初日は、ほとんど面識の無かった柊君と旅行をするなんて、絶対に有り得ないと思っていた。


それなのに…


今は別れを惜しむ自分(アタシ)がいる事に気付いて、それを隠すように唇を噛み締めた。


新幹線を降りる時に上手く笑えない気がして、柊君の顔を見る事が出来なかった。


「遥さん」


そんなあたしを呼んだのは、たった三日間で聞き慣れてしまった低い声。


優しい声音に名残惜しさが込み上げ、小さな笑みを浮かべるだけで精一杯だった。


「これ、プレゼントです」


「え……?」


「もしよかったら、受け取って下さい」


柊君に突然差し出された小さな紙袋には、さっきまで過ごしていた温泉街の地名が書かれていた。


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