スイートスキャンダル
「今回の記念です」


「いいの?」


目を小さく見開くあたしに、柊君がどこか自嘲気味に笑った。


「いらなかったら、捨てて下さい」


そう言いながら手の平に乗せられた小さな紙袋には、彼の優しさが詰まっている気がした。


「……捨てないわよ」


柊君は、あたしなんかと旅行して楽しかったのかな……


不意に抱いた疑問は口には出せないまま、後ろで新幹線のドアが開いた音がした。


「……三日間、ありがとう」


「俺の方こそ、本当にありがとうございました。遥さんと過ごせて、すごく楽しかったです」


やっとの思いでお礼を告げたあたしに、柊君はそれ以上の気持ちを優しい言葉にして返してくれた。


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