スイートスキャンダル
「近々、不動産屋に行こうと思ってるんです」


コーヒーを差し出すと、不意に柊君がそんな事を口にした。


「このまま実家に住んでもいいんじゃないの?」


「両親はそうして欲しいみたいですけど、それだと遥さんに家に来て貰い難いですし」


サラリと放たれた言葉に、思わずドキッとする。


「それで、有紀から聞いたんですけど、遥さんも引っ越そうと思ってるんですよね?」


必死に平静を装うあたしを、柊君がじっと見つめた。


確かに、独身を貫いてしまいそうだったからいっその事マンションでも購入しようかと考えた事も、数ヶ月前にそれを有紀に話した事もある。


だけど…


あたしは、あくまで“考えただけ”なのだ。


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