大嫌いなアイツ
 

――――…


「―――――え?」


私はシフト表を見て、目を疑った。


吉野のところを辿ると、今日は休み。
そして……
明日のところには、“アップ”の文字。
明後日からは空白だ。


………待って。
アップ、って?
もしかしなくても、吉野、バイト辞めるの…?
何で、急に?


「お疲れー久しぶりだね!」

「あっ、お疲れさまです!」


同じフロア担当のミキ先輩に声をかけられる。
すごくキレイな人で、頼れる先輩。
熱湯事件の時も、すごく心配してくれた優しい先輩だ。


「試験の出来は!?」

「き、聞かないでくださぁぁい…。再試はまぬがれましたけど………って感じです…」

「はははっ!いいよいいよ、私なんてどれだけ再試受けたか!学生なんて、遊ばなきゃ損損!」


ポンポンっと頭を撫でられる。
この笑顔はみんなを元気にさせてくれる。
私はミキ先輩の全てに憧れているんだ。
バイトをしながら夢を追う姿も本当に素敵で。


先輩が横からシフト表を覗いて、トントンと吉野の名前を指差した。


「あ、そうそう、急だよね~。吉野くん辞めちゃうなんて。理系だし、大学忙しいのかもね」

「―――あ、やっぱり辞めるん、ですね…」


混み上がってくる気持ち。
…胸の痛みと苦しさだった。


ほんとに辞めちゃうんだ…。
吉野がバイト辞めたら、接点が何もなくなる。
連絡先さえ知らないんだから。


…やだ。
やっと、吉野のことわかってきたのに。
会えなくなるなんて…

 
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