大嫌いなアイツ
 

***


―――事件は今から2週間前、バイト中に起こった。



接客業をしていると客から絡まれることなんてよくあることで、この日もいつものようにうまくかわすつもりだった。


――――でも、簡単にはいかなかった。






「ねぇ、お姉さん。仕事終わったら俺たちと遊ばない?」


そう声をかけてきたのは、男二人組のお客さん。
見るからに、俺様で偉そうな態度。
でも、そんなこと私たちには関係なくて、お客さまはお客さま。
丁寧に対応しなければいけない。


「申し訳ありませんが、それはできかねますので…。では、ごゆっくり…」

「な?いいだろ?付き合えよ」

「いや、あの、申し訳ありません」


頭を丁寧に下げる。
…心の中で、『しつこいんだけど!』とイライラしながら。
でも、イライラしていたのは、私だけじゃなかった。

 
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