大嫌いなアイツ
 

――――パタン


梨夏が帳簿を閉じた。


「――――よしっ。終わり!」

「お疲れ。」

「うん!お疲れさま!」


梨夏のご機嫌はいつの間にか直ったみたいで、笑顔がこぼれる。
その表情に正直ホッとした。


「じゃ、帰ろ。」

「うん!」


ルンルンとロッカールームに向かおうとする梨夏の腕を掴む。
帰ろう、なんて言いつつ、正反対の行動をしてしまう俺。
そのまま、俺の胸の中に引きずり込んで、梨夏を後ろから抱き締めた。


…抱き締めたい衝動に駆られたんだ。


「へっ?なっ、何っ!?」

「…」


慌てる梨夏をよそに、俺は一人緊張する。
すうっと息を吸って、言葉を出す。
さっき梨夏にキスしてから、ずっと言うのを我慢していた言葉を。


「…………今日は一緒に帰ろ。俺の家に」

「!」



 
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