大嫌いなアイツ
 

***


――――おい、またかよ。


フロアを覗くと、そこには岡部が男の客にナンパされてる姿があった。
岡部は一見普通に見えるのに、その笑顔から何かオーラが出てるのか、人を寄せ付ける。


確かに、笑うとかわいさが増すんだよな…。


とは言っても、岡部は俺に対して一度も笑顔なんて向けたことはないから、遠くからしか見たことはないけど。
岡部は俺と目が合うと、嫌そうな表情を浮かべる。
緊張とかではなく、本当に俺のことが嫌い、って言うような態度で。


………何だよ、俺何かしたか?


理由が思い当たらなくて、他のバイト仲間と笑顔で話している姿を見ると、ついイライラとしてしまう。


俺はと言うと、岡部を目の前にすると、緊張で無愛想な態度になってしまう。
好きな女の前で素直になれないとか、ガキの証拠だと思うし、情けないんだけど。


…岡部と目が合った瞬間は緊張し、その次の瞬間には岡部の表情を見て落ち込む。
そんな日々が続くようになっていった。

 
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