大嫌いなアイツ
「――――おい!何やってんだよ!?」
…柄にもなく俺は慌て、叫んでいた。
岡部の唇に小林の唇が触れようとしたその瞬間、俺の手によって、それは止められる。
「っ!よ、しのく…っ」
岡部の目に溜まる涙。
プチン、と何かが切れる音。
一気に、俺の中に怒りが生まれた。
「おいおい。吉野、邪魔すんな、つったよな?」
「………どう見ても、岡部さん嫌がってますよね?それをどうこうしようって思うの、おかしいと思いますけど」
飄々と話す小林。
それに反して、俺は必死だった。
殴りたい気持ちを抑えることに。
でも、そんな権利、俺にはないんだ。
俺は岡部の彼氏なんかじゃない。
…俺の片想いなんだから。
はんっ、と小林が鼻で笑った。
「なぁ、吉野~お前もコクれば?梨夏ちゃんのこと、」
「これって、立派なセクハラですよね?」
「あ?」
小林の言葉を遮るようにして、俺は口を開いた。
お前の口から、俺の気持ちが伝わるなんて勘弁しろっての。
俺の言葉に、小林は眉間に皺を寄せている。
でも小林なんかのことより、岡部のことが気になって、目を向けた。
「…岡部さんは―――…どう思ってるんだよ」
「…へ?」
「こういうことされたいのか、されたくないのか、聞いてるんだけど」
「!」
岡部の顔がカッと赤く染まる。
その表情を見て、俺は祈る。
…されたくない、って言ってくれ。