大嫌いなアイツ
 

…最近、梨夏の様子がおかしい。


俺の名前を呼んでくれたかと思えば、次に出てくる言葉は『何でもない』。
しかも、キョドり方が半端ない。


…絶対に何かある。


最初のうちは何度も問い詰めていたけど、度が過ぎると梨夏は拗ねるから、最近は数回聞いて諦めることにしてる。


…本音はめっっっちゃくちゃ聞きたいんだけど。
しつこくしすぎて嫌われるのが怖い、と思ってしまうんだ。


…付き合い始めてから丸半年。


まだまだ俺は梨夏に弱い。
いや、きっとずっと弱いままだろうな…。
情けないけど。





「…ねぇ?吉野。冷蔵庫のもの、使っても大丈夫?」


ひょこっとエプロン姿でキッチンからリビングに顔を出してくる梨夏。


…たまらない。
って思ってしまったことは、とりあえず隠しておく。


「あ、うん。何?作ってくれるの?」

「大したもの作れないけど…お腹すいちゃったし…。作ったら一緒に食べてもいい?」

「もちろん」


俺は立ち上がり、梨夏に近付く。


「え、吉野、座ってていいよ?時間かかるから」

「いーの。」

「…ちぇ。座ってていいのになぁ…」


梨夏はちょっと不服そうな顔をして、冷蔵庫に向かった。


…さ、何作るんだ?

 
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