大嫌いなアイツ
冷蔵庫から野菜を取り出す。
野菜を洗って、まな板の上に。
そして、包丁を握る。
―――いざ!
トン、トン、とゆっくり野菜を切っていく。
相変わらずの超スローペース。
…でも、これでもかなりマシになった方で。
梨夏は料理が苦手らしく、作ってくれるようになった最初の頃は、嬉しい半面、見てるこっちがヒヤヒヤものだった。
口を出しすぎて、うるさい!って一蹴されたこともあったっけ。
真剣な顔がかわいくて、毎回、抱き締めたくなるんだけど…
包丁を持ってる時は洒落にならないから触らない。
でも、触りたいよなぁ~。
ふと梨夏が手を止めて、俺の方に目線を向けた。
「…吉野…見られてると緊張するからあっち行ってて?」
どうやら、野菜を切りつつも俺の視線が気になっていたらしい。
でも。
「嫌。梨夏いないとつまんないし」
「!さ、さっきみたいに雑誌読んでればいいじゃん!」
「もう読み終わった」
「うっ」
ぷぅと膨らむ頬。
この表情が好きで、ちょっと意地悪してしまうんだけど。
俺はふっと笑って、梨夏に近付く。
梨夏の手から包丁を取り、危なくない場所に置く。
「…エプロン姿って萌える。」
「!」
梨夏を後ろから抱き締める。
ふわふわしてて気持ちいい。
「ちょっと…吉野…っ。料理できないから離れてよ」
「やだ。触りたくなるような格好してる梨夏が悪い」
「ダメだって…吉野ってば!ひゃ…っ」
髪の毛を結ってアップにしているから、首筋は超無防備。
そこに口づける。
「や…っ」
「…止まんない。」
「ま、待っ…だめ…っ!…っ」
…こうやって、俺はついつい梨夏を味見してしまうのだ。
これが、日常―――だった。