想 sougetu 月
 どうやってことを収めるべきか考えている私に、斎の真っ直ぐな視線がぶつかる。

「好きだ」
「!」

 その言葉を聞いたとたん、痺れるような甘い疼きが全身を駆け巡る。
 たった一言なのに、信じられないほどの威力があった。

 一気に顔が赤くなっていく。

「あ、ありがとう」
「ありがとう? 月子は好きだって言ってくれないのか?」
「えっと……」

 言わずにこの場を何とかしようと思考を巡らせる私を見て、斎は苦しそうに顔を歪めた。

「言わないですませるにはどうしたらいいか考えてる?」

 胸中を言い当てられて、うっかり反応してしまう。
 そんな私を見て、いきなり斎はテーブルに握り締めた手を叩き付けた。

 テーブルの上に乗っていた料理が振動でがちゃんと音を立てる。

「い、斎……」

 斎は顔を伏せているので表情がわからないがこれほど怒っている斎は見たことがない。

 今までどんなことがあっても、斎は物を壊したり暴力的なことはしたことがなかった。
 ただならぬ様子に恐怖が沸き起こる。

 次の瞬間、斎はテーブルの料理を腕でなぎ払った。

 すごい音を立てて料理ごと器がすっ飛んでいく。

「いい加減にしてくれ!」

 怒りを含んだ苦しそうな声だけがリビングに響き渡った……。
 
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