想 sougetu 月
 それから2ヵ月後、2年近く一緒に住んでいた祖母も亡くなってしまい、両親のいる南アフリカへ行くしかなくなった時、南アフリカへ行くに反対したのが斎だった。

 結局、斎が両親を説き伏せ、私は斎の家に住むことになったのだ。
 それが12歳の夏の事だった……。

 それから19歳の今になるまで、私は斎だけを思い続けている。
 
 何度も諦めようと努力した。
 何度も他の人を好きになろうとした。
 でも、融通のきかない私の心は、斎だけに向いてしまう。

 そんな私に出来ることは、この気持ちを隠すことぐらいだ。

 王子様のような斎。
 社交的で明るく優しい斎は、男女問わず誰からも好かれる。

 斎に触れる女の子に。
 斎に告白できる女の子に。
 何度もこの胸を焦がし、痛みに耐えてきたことか……。

 自分の気持ちを誰にも悟られてはいけない。
 罪を犯すことは出来ない。

 そんな思いが私を何年も苦しめ続ける。

 だから私は決めたのだ。
 20歳の誕生日、この家を出て一人暮らしすると。

 11月11日の誕生日。
 その日に出て行くわけにはいかないので、誕生日の日にみんなに言うつもりだ。

 その為に、自分の両親には話して了承をとっている。
 あとは青柳家のみんなに話すだけだ。
 
 私は20歳を境に斎への気持ちを強制的に断ち切る。

 それが私の決めた結論だった。
 
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