君がいるから
アディルはジンの元へと駆け寄り、あきなを見た瞬間に顔を歪ませた。荒々しい呼吸、顔色は白く止め処なく溢れる汗、手や足に視線を流すと1つの傷口が濃紫の色へと変色しているのに気づく。
落としていた視線を不意に上げ、ジンの右腕の布が切れており、その傷口もまたあきなと同じ。
「王!!」
声を上げると共にジンの体がグラッと傾き、アディルは咄嗟に腕を引っ張り倒れようとする体を支えた。
「……っ最短ルートで来たが……俺とした……ことが油断し……た」
「喋ると余計に毒が回ります!!」
背後にいる数人の内、2人の部下が歩み寄りジンの体を支えると、あきなをジンの腕から自分の腕の中へと移動させる。
「残りの者は各自配置に着け!! まだ盗賊が身を潜めているかもしれない! 気を抜くな!!!」
「「はっ!!」」
アディルの怒気を含んだ声音に、顔を今一度引き締め背筋を伸ばし一斉に散って行く。
「体が揺れないよう注意しながら早急に運ぶんだ」
「了解しました!!」
ジンの体を背負い、アディルの前を先に走っていく部下達。その後に続いてアディルもまた、あきなを抱え城へと足を向けた時――。
「っん……はぁはぁっ」
自分の胸元で苦しむ声を小さく上げるあきな。
「もう少しだけ我慢してくれ」
苦しげに顔を歪ませるあきなの表情に、アディルは眉尻を下げて囁き、庭園を走り抜けて行った――。
「何があった」
城下町へと視察に出て戻ってきたアッシュは、慌しく騒がしい音に目を細め、目の前を走り抜けて行こうとする騎士の腕を掴み問う。
「団長!! それが……異世界の少女が盗賊に攫われてしまって」
「それで、どうした」
冷ややかな青の瞳に、体が強張る部下は何とか口を開いた。
「先程、保護したのですが」
「したが、なんだ」
「先ほど副団長が王と少女を薬医師の元へ」
"王"という言葉に反応し、目を細めたアッシュ。
「何故、そこで王が出てくる」
「何故かは自分にも分かりませんが、お2人ともヤダリの葉の毒に侵されていると……。私はその場にいたわけではありませんが、そう耳にしました」
「邪魔をした。持ち場に戻れ」
「はっ! しっ失礼します!!」
部下が一礼をし走り去った後。アッシュは何かを考えるかのように、青い瞳に厳しさを含ませ、一点を見つめていた――。