君がいるから


 掴み上げられた腕を乱暴に振り放されると、赤い髪がものすごい勢いで、欠伸をするおじさんの元へ駆け寄り胸倉を掴む。

「おいっおっさん!! あの女の部屋にしっかり鍵かけたんだろうな!?」

「んあ? あ~……あ? ん~……」

 胸倉を掴まれても、表情もペースも何1つ崩さないおじさんは、天井を仰ぎ見て考える素振りを見せる。そして、パッと口と手を広げて、赤髪の男より高さがあるおじさんは視線を落とす。

「あ~忘れちまってたぁ、かな」

 ボサボサの髪を更に崩すように掻き、豪快に笑い出してしまう。

「んだと!? おっさん、てめぇな!!」

「あはははっ、すまんすまん、悪い悪い。でもよ~? まぁ、誰にでも失敗はあるってもんさぁ、なぁ?」

 背後にいる仲間達に同意を求めるも、誰もが空笑い。その態度は悪いって思ってないように見えてしまうのは、私だけなんだろうか。
 鈍く痛む箇所を擦り、ふと視線を落とす先――あいつの手形が赤く浮かび残る自身の腕を見つめる。

「おいっ! ウィリカ、いるか!?」

 背後から突然大声が上がり、瞬間、驚きのあまり肩が跳ねる。その時、ポンッと肩の上に何かが乗った感覚に視線を移すと、ゴツゴツとした手の甲が乗せられていて、その主を確認する為に恐る恐る視線を上げた。

「そう怯えんなって。悪いようにはしねぇからよ」

 よくよく顔を見てみたら、結構若い印象を受け、整った顔立ちをしていたのは――先ほどから私の逃げ場を塞いでいる男性で。濃茶の短髪に黒地に白の模様が入った布を巻き、キリッとした目元、赤がかった茶色の瞳。

「そんな見つめんなって。俺がかっこいいからってよ。照れるぜ?」

「いや、そういうわけでは……」

「ネゼクー? 僕を呼んだー?」

 また新たな声が届き視線を前に戻すと、今だじゃれあってる――2人の間を気にせず割って入り、私の元へと歩み寄って来る人が1人。今度は綺麗な白髪、クリッとした大きな輝く金の瞳、真っ白な肌の女の人なのか――男の人なのか。

「相変わらず煩い2人。まったく何なのさ、この騒ぎは」

(かっ、顔に似合わず声が低っ)

 確実的に男の人だと、勝手に自問自答する。

「お~ウィリカ。この子の腕、見てやってくんねーか? ギルの奴が手加減しなかったみてーでよ。ほれっ」

「あー本当だ。りょ~か~い」

 背後にいる男の人が指し示す私の腕を見て、腕見せてね――言う低い声はとても優しい。


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