君がいるから


   * * *


「まだかな~。ま~だっかな~」

 カキーン カキーン

 剣先が落とされては上へ、落とされては上へ――何度も繰り返される度に、鉱物質の床に当たって耳障りな音が必要以上に広がる空間に反響する。顔を伏せ、ぼそぼそと口を動かし続けている人物がこの場に1人。

 キキキーーキッ キキーーッ

 剣を落とすことを止めたかと思えば柄の部分を握り、今度は床に押し当て手前に引いては戻し――繰り返す。そこへ。

「お待たせして大変申し訳ございません!! 準備が整いました!!」

 足音を響かせ、顔を伏せ座り込む人物に一定の距離を取って、姿勢を正し声を掛ける1人の兵士。そして、その言葉に反応してゆっくりと立ち上がる影は兵士の下へと近寄り――。

 バキッ

「ぐわぁっはっ!!」

 突如、兵士の体が宙に浮き、硬質な床に強打しぐったりと横たわる。兵士の頬は大きく腫れ上がり、気を失っている。男は手を何度も汚いものを払うかのように振り、足元に横たわる人物に目もくれず歩み始める。

「時間かかりすぎなんだよね~。僕の指示した時間から5分も経ってるじゃないか」

 手にしている剣の刃をねっとりと舌で舐め上げ――鞘に納める。

「退屈すぎて、死んじゃう所だったじゃないか」




(やっと――また会えるね? 退屈な日々だったなぁ~)

「ふふ……ははは……ははっ」

 肩を震わせながら、不気味な笑みを浮かべる口元。

(あぁ――この剣で早く君を、切り裂きたい。今度は楽しませてくれるよ、ね? 僕は君と遊びたくて、遊びたくて)

 1つの影は高笑いを上げ続け――暗闇の中へと姿を消して行く。


< 254 / 442 >

この作品をシェア

pagetop