君がいるから
「もう少ししたら、夕食の時刻になるので行きましょうか」
騎士さんの言葉に頷いて、私達は再び元来た歩廊を歩こうとした刹那。いつからその場にいたのか――私達の背後に見慣れた人物が壁に背を預け、腕組をし立っている人物に驚きの声を上げた。
「レイ、どうしたの!? こんな所で」
レイは鼻を鳴らして、視線を逸らせてしまう。
(こ、今度は何に対して怒ってる……だろうか)
「レ……イ? どうしてそんなに不機嫌な表情をしているのでしょう……か?」
レイの顔を伺いながらそっと問うと、レイの眉間の皺はますます濃くなり、細まる目が私を見る。一瞬、私は構えるように体を小さく動かす。
「…………」
「レイ。おーー……い」
「鈍感女」
ぼそり――呟かれたレイの一言に目を丸くする。
「どっ鈍感って。言ってる意味がいまいち分からないんだけど」
「そのままの意味」
「いやっ説明してくれなきゃ分からないから」
「鈍感、暴力女」
「ぼっ暴力女!?」
再び鼻を鳴らして、そっぽを向くレイ。突然、今この場でレイにこんなことを言われなきゃいけないのか。たしかに、一国の王子様相手にチョップをしてしまったのは事実。まさか、今になって怒りが込み上げ、抑えられなくなってきたのだろうか。だから、わざわざ私を探し、この場までやって来たのだろうか。
「チョップしたことを怒ってるんだよね! それは……本当に私が悪かったです。ごめんなさい」
「…………」
「それはそうだよね……一国の王子様であるレイに対してする事じゃなかった。本当にごめんなさい」
踵を揃えて両手を重ね合わせ、深々と頭を下げる。
「誰がそんな何時間も前のことで腹を立てるんだ。俺はそこまで器は小さくない。馬鹿にすんな」
レイの言葉に下げていた頭を上げると、腕を組んだまま未だに目元を細め私を見つめているレイ。
「え……そうなの? じゃあ、どうしてそんな不機嫌そうな顔してるの」
「……別に」
レイはそう言って、再び私から視線を逸らしてしまう。私は小さく鼻から息を吐き出して肩を下げた。レイの言動は全然掴めないし、どうしたもんかと頭を悩ませる。チョップが原因じゃないなら、本当の原因は何だったんだろう。