君がいるから
「何だ?」
「私は……どうなるんでしょうか?」
ずっと不安に思っていた気持ちを口に出した時、再び不安にも襲われて膝の上に置いてある両手を強く握る。
今すぐに帰れる方法があるなら、早く帰りたい。それが出来ないなら、私はきっとここには――。
「帰る方法が見つかるまで、ここにいるといい」
「へ?」
予想だにしていなかった返答に、すっとんきょな声を出して王様を見る。
「何だ。お前をそこら辺にでも捨てると思ったのか? 俺は丸腰の――ましてや女をその辺の森にでも捨てる冷酷な男に見えでもしたか?」
「あっいえ……そんなことは……。ここにいていいんですか?」
「いていいと言ったはずだが。慣れない場所だと思うが、好きに過ごせばいい」
口端を少し上げて首を傾げ笑う王様。その言葉に少し緊張が解け、全身の力が抜けて椅子の背もたれに体を預けた。
「王はこう言ってはいるが――」
胸を撫で下ろしたのも束の間、王様の横方にいる老人が口を開く。老人は目を細め厳しい面持ちを私の方へ向ける。
「護衛となる人物をこの場からつける。その者達と行動を必ず共にしてもらう。そして、この城から一歩も出ることはしないで頂こう」
「え?」
「よいか、あきな」
そう言うと老人は腰を上げ、背を向けていた窓へと体を向け言葉を続ける。
「お主には少し窮屈に思えるかもしれん。だが……『元の世界に帰るまでの間、お主の身を守る為』だ。理解して頂けるかな」
外を眺めている老人は、私に有無を言わせない空気を纏って問う。
「――はい。わかりました」
最早、私にはそう答えるしか出来ない。老人の口調には、まだ私を『信用はしていない』と、言葉とゆっくりと向けられた眼差しで感じ取ってしまった。
これは、護衛という名の監視だ。
「護衛については、アッシュ、アディル。両名に任せる」
最初からずっと何かを書き取っている老人が口を開き、2人の名を呼ぶ。そして、アディルさんとあの男は腰を上げ、老人達に向かって頭を下げた。
「では、頼んだぞ。話は以上だ、みなご苦労だった」
いつの間にか再び外を眺めている老人の合図で座っていた人達は、立ち上がってぞろぞろと部屋を後にしていく。
「あきな、部屋へ戻ろう」
アディルさんの一言に重い腰を上げ、王様と老人に一礼をして部屋を後にした――。