夜明け前


そーちゃんの後についてまず向かったのは、理事長室。


「…さく」


隣を歩くさくに話し掛ける。


「どうしたの?」


「…廊下がふわふわだね」


廊下に絨毯が敷いてある。


前の学校はつるつるだった。


「転んでも痛くないかなぁ」


真剣にそう言ったのに。


「「ぶっふ」」


前を歩くそーちゃんと、隣のさくが噴き出して笑っている。


「…何を言い出すかと思えば、…珠花、緊張してないのか?」


「…緊張?」


考えてなかった。


そうか、緊張するものなのか。


「…あー、うん。…しないね?」


「…ね?って、…俺でも多少してるのに、…しゅーは大物だよね」


「そうだな。まぁよかったよ。…朔乃、無理はするなよ」


「…うん。まぁ適度に頑張るよ」


「はは、そうだな。…と、もう着くよ」


そう言ったそーちゃんの視線の先には、よく見れば理事長と書かれたプレートが見える。


「…理事長室なんて初めて。ね?さく」


「うん、そうだね」


「…まぁ、期待はあんまりするな?…変わった人だから」


とそーちゃんが理事長室の扉をノックしようとした、時。


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