夜明け前
―さくからちゃんと聞いてるから、違うって分かってる。
だけど邪魔してる、そう言われた時ぐっと息が詰まって、胸が苦しくなった。
さくはずっとお兄ちゃんで、私のことばかり優先してくれる。
無理させて我慢させて、自由なんてなくて…。
―私、さくの邪魔してる。
そんなことを考え込んでいる間に周りの様子は変わっていて、
「―聞いてるの?…黙ってるとか感じ悪い」
「本当に、うざいよね」
「まじでムカつく」
「ね、もうやっちゃおうよ」
「言ってもわからないみたいだし」
「ね、あんたが悪いんだっ、てね!」
―バシャッ!!
「はは!びしょびしょ」
「調子乗るのが悪いんだからね!」
「消えちゃえば?」
「あはは、言い過ぎ!」
「ね、もう行こ?」
「人来たらやばいしね」
「じゃーねー」
―そう言って走り去って行く彼女達の後ろ姿を見つめながら、濡れた自分の体をキュッと抱きしめた。