夜明け前


「…あとね、私からのお願い。おじい様とおばあ様を、嫌わないでほしいの。…許しなさい、なんて言わない。簡単にわだかまりが消えるとも思わない。だけど、前に進まないとなにも変わらない、そう清風が言ってたでしょう?」


「…進まないと、変わらない。うん、よく言ってたね」


「ね。少しずつでいい、無理しなくていい、立ち止まってもいい、だけど、やめてしまったり、あきらめてしまってはダメ」


ずっと黙っていた朔乃が、口を開いた。


「…こちらが心を開けば、見えて来るものがたくさんある。そう言ってたよね」


優しい表情を浮かべる朔乃が一瞬、姉様に見えた。


「…とゆうわけで、奏音さん」


三人の様子を見守っていた、とゆうか置いて行かれていた俺は、朔乃の強い視線に、緩んでいた姿勢に気合いを入れた。


「これから、」


「「よろしくお願いします」」


さすがは双子。


「はは、…こちらこそ、よろしくお願いします」


二人の眩しい笑顔は、これから始まる新しい毎日を予感させる。


二人の居場所になれるように、心が帰って来れる、そんな関係を築きたい。


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