わたるんといっしょ
愚痴と弱音が混じった呟きを聞いて、渉は少し間を置いたが、とんとんと好美の肩を叩いた。
「僕のことも、忘れてますか?」
顔を上げれば、少年がいる。
「――、分かるよ。今日は普通の格好なんだね」
少年の『いつも』を思い出せた好美は、苦笑した。
かくいうその少年は、その様子に安堵したか、息を吐く。
12月の気温は、吐く息を白くしていそうだが、今の時間は夜。暗がりではその白も、黒に呑まれてしまった。
河川敷の対岸にある住宅街の明かりで、何とか相手の顔を見れる視界ではあるものの、この無表情の大人びいた少年は、渉だと理解できる。
好美にとっての渉とは、不思議な少年だ。