わたるんといっしょ
詰襟学生服に学生帽。そうしてマントを羽織った、昭和からタイムスリップしてきた見目はもとより。
「渉くんも渉くんで、どこか生きた心地がしないよね」
地に足がついていない人とは語弊ではあるが、渉にはおおよその人間味を感じられなかった。
喜怒哀楽に乏しい。
何を考えているか分からない。
ふとした瞬間に消えてしまう霞でありながら、掴めない人。
「そんなこともないですよ」
「だね、今見て思うよ」
それが『いつも』と違う渉。表情は相変わらず、冷めたような感じでも、体の冷たさには耐えられなかったよう。
黒コートに、手袋。マフラーまで巻いた防寒仕様。コートの下は、もうしかしたらいつもの詰襟学生服かもしれないが、小柄な渉が丸く見えるのであっては、中に何枚も着ているのは明白だった。