黄昏バラッド


***


サクもそれから普通に戻り日が暮れ始めたころ、時計を確認したサクがギターを手に取った。


「今日は歌いに行くけど、一緒に行く?」

「えっ?」

思わず恥ずかしいくらいの反応をしてしまった。だってサクの歌を聞いた時から、また聞きたいと思ってたから。


「い……行ってあげてもいいけど、別に」

相変わらず素直じゃない私。なんでもっと可愛げのある言い方ができないのかって自分でも思う。

でもこんな私をサクは理解しているみたい。


「じゃ行こう。いつも6時までに公園に着くようにしてるから」

部屋の窓からは夕日が差しこんできて、ゆっくり用意しても余裕で6時には間に合う。


「わかった。着替えるから待ってて」

私は今日買ってもらったTシャツとデニムを手に取った。サクの前で着替えるわけにはいかないから一応、洗面所へ。

制服を脱ぎながらやっぱり見てしまうのはピンクの歯ブラシ。


サクは彼女いないって言ってたけど、本当はどうなんだろう?

いたら私を家に呼んだりしないと思うし、もし隠したいなら見える場所にこんなもの置いておかないよね。


サクは少し抜けてる部分がありそうだし、ついってことも考えられるけど、別にサクに彼女がいても不思議なことじゃない。

だって顔はまぁまぁかっこいいし、身長も高いし、肌はスベスベだし。男らしさだったり、肉食系には程遠いけどね。
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