黄昏バラッド


私の着替えが終わってすぐ家を出た。

サクの肩には黒いカバーに入ったギターがかけられている。自慢そうにギターを持ってる人は好きじゃないけど、サクは妙に似合う。


夕焼けの下をふたりで雑談しながら中央公園へと向かった。


サクの家に行った時も同じ道を通ったけど、なんだか違う景色に見える。あの時は暗かったし、不安の方が大きかったけど今はサクの隣に並ぶことに抵抗はない。

まだ知り合って間もないのに、なんだか不思議。


こうやって知らない土地で生活して、サクと一緒にいれば私も少しは変われるかな……?

嫌なことも悲しいことも全部忘れて、一からスタートできる?

このノラっていう新しい名前で。


これはわがままで甘い考えなのかもしれないけど、今だけはなにも考えずサクと肩を並べていたい。
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