【完】運命は罠と共に
「ちょっと亜美、急いで!」


亜美と2人で1つのベッドで眠った。


久々に夜遅くまで2人でおしゃべりしていたら、朝少しだけ寝坊してしまった。


遅くなったといっても余裕で間に合う時間だったはずなのに、念入りにスキンケアをしていた亜美はやっぱり最後バタバタしてしまった。



「分かったって。後は助手席で仕上げるから、奈々運転よろしく」


申し訳なさは一切感じない、堂々とした態度で私の運転する車に乗り込んできた。


「はいはい。シートベルトはちゃんとしてよね。てか、そのチョコどうすんの?」



亜美の手には、病院でスタッフに配る義理チョコと優へのチョコレート。


優へのチョコレートには私が作った分も含まれている。


いわゆる義理チョコだけど。



「優のはリハ室の冷蔵庫にいれとくよ。奈々は今日田中さんに渡すの?」


「うん、そのつもり。仕事終わりに家に来るって言ってた」


明日が土曜日で、職場の飲み会があるから遅くなるって言ってたけど。


ゆっくり一緒に過ごしたかったから、私も明日は希望休を取っている。


若い彼氏もちの子たちは今日休みを希望していたから、すんなりと15日の希望は通った。



「ふーん、なんだかんだラブラブだよねー。チョコだって一生懸命作ってたし」


「そんなのいちいち言わなくていいから。それとも私をからかおうとしてる?無駄だよ。あんまり言うと、亜美が一生懸命チョコ作ってた姿を優にメールで送っとくから」




となりでギャアギャア騒いでいる亜美は無視だ。


さー、一日仕事頑張れば洋輔さんに会えるんだ。


そう思うと少し憂鬱な朝が、楽しいものに思えてきた。


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