【完】運命は罠と共に
仕事でミスをした。


正確に言うと私が指導している1年目の看護師のミスに、私も気付かなかった。


そのミスがまた初歩的といえば初歩的なもので、指導はどうなっているのかというお叱りを受けたのだ。



「金本さん、今回はたまたま他のスタッフが気付いて、ミスも想定されて作られた輸液だったから良かったけど、一歩間違えれば患者さんは亡くなってしまいますよ。そういう薬品を扱っているということを自覚してください」


主任の言葉に、ただただ謝ることしか出来なかった。


今回は不幸中の幸いで、点滴開始前に他のスタッフが気付き発覚した。


インシデントどころかアクシデント、医療事故になっていたかもしれないと思うとゾっとした。


看護師暦が長くなるにつれ、私の患者さんの命を預かっているという認識も薄くなってしまっていたかもしれない。


ここで気付かされて良かった。



「これはプリセプターであるあなたのミスでもあるんですよ。インシデント報告書もあなたがチェックして持ってきなさい。最近金本さんの勉強会への参加が前より減っているでしょ?休日にまで仕事だけに集中しなさいとは言わないけど、命を預かっているんですからね。その点は絶対に忘れないでください」


続く主任の言葉が私の胸に刺さった。


最近の私の行動を思い返すと反論できる要素さんて思いあたらなかった。


「すみませんでした。今後このようなことが起こらないように、もう一度指導して、私も再度勉強します」


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