【完】運命は罠と共に
今日は仕事が休みだった。


けど、そのことを洋輔さんには故意に言わなかった。


でも仕事だとも言ってないし、嘘はついていない。


普段から洋輔さんと休みが合いそうな日と、夜家にいない日だけは事前に伝えてある。


もし私がいなくても先に部屋に入れるように合鍵も渡してあった。




「私が何も言わずに出かけてたからでしょうか?」


思い当たることはこれくらいしかなかった。


洋輔さんに言いたくない好きな事をしていた。


それに、さっきから洋輔さんの剣幕に押されてつい敬語で答えてしまう。




「で、何してたの?」


「……」


言うか悩んでいる私に洋輔さんの顔が辛そうに歪んだ気がした。


「……映画」


観念して話すことにした。


まだためらう気持ちも大きくて、思ったよりも小さな声になってしまった。


「映画?何を?誰と?」


淡々と言う彼に少し恐怖感も覚えた。


だっていつもの洋輔さんと違うから。


こんなに怒った様子なのは初めてだから困惑した。



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