私を壊して そしてキスして

「これは、ダメだ。自分の力で眠るんだ」

「でも、眠れないの。それに、翔梧さんだって眠れない」

「俺の事はいい。
お前の一大事に、のうのうと眠っていられるほど、俺は酷い男じゃないぞ?」


そうクスッと笑いながら、ギュッと私を抱き寄せる彼。

こうして強く抱きしめられることで、ここに存在する自分を確認して、そして、必要としてくれている人がいると感じられて……やっと落ち着きを取り戻していく。

そんなことの繰り返し。
それも、毎晩。


けれど、そんな根気強い彼の行動のおかげで、次第に眠りにつく時間が短くなっていって、嫌な夢を見る回数も、激減していった。



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