私を壊して そしてキスして

「離して。私は何も話すことなんて……」


そう抵抗したものの、ギュッとつかまれたその手を振りほどくことができなかった。


そのまま、引きずられるように、少し人気のない路地に引き込まれる。


「菜那」

気安く呼ばないで。


「菜那、俺はお前とやり直したい。

愛希の事は、本当に申し訳なかった。
愛希に迫られて、俺……悪い気はしなくて。でも、バカなことをしたと思ってる。

分かったんだ。
愛希ではダメなんだ。

いつも菜那と比べてしまって、菜那の事ばかり考えている」


何を今更――。


「勝手なこと、言わないで。もう……もう無理だよ」


愛希に迫られたから? 
自分の意志だって、あったんでしょ?



< 127 / 372 >

この作品をシェア

pagetop