私を壊して そしてキスして

「あの男がいるからか?」

「えっ?」

「この間、キスをしていた……」


そうだった。
愛希と一緒のところを目撃した翔梧さんが、わざと私にしたキス。


「あの人は、関係ない」

「菜那」


彼が私を壁へと押しやる。


「お前も、浮気していたんじゃないのか。お前だって、同じじゃないか」


靖司の言葉に、私の心が完全に凍った。


「そう……だったら?」


歯を食いしばって彼を見上げると、少し怒ったような顔。

どこから狂ってしまったんだろう。

こんなはずじゃなかった。
今頃、幸せな、はずだったのに。



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