私を壊して そしてキスして
「菜那――」
愛希と彼の前を通った時、靖司が私の名を口にする。
ずっと好きだったこの声も、今となっては私に鋭く突き刺さるだけ。
唖然と私を見つめる彼が、詰め寄りそうになったとき、私は声を振り絞った。
「愛希を、お願いします」
やっとのことでそういった一言。
あれから、彼と言葉を交わしたのは、初めてかもしれない。
思わず立ちすくんでしまいそうな私の背中を、翔梧さんが押してくれた。
靖司が翔梧さんを見て、何か言いたげにしているのは分かったけれど、もうそれ以上そこに留まることができなくなって、俯いたまま足を進めた。