野良猫にも希望はある?
 
「なっ!?ちょっ真結美さん!!」

 僕の叫び声は、真結美さんの耳には届いていない。

 真結美さんの雰囲気がいつもと違う──優しく微笑みかけてくれる、真結美さんではない。

 怖い──

 今の真結美さんには、この言葉しか浮かばない。

 背筋が凍る。心臓の鼓動がバクバクして、気持ちが悪い。

 ───ニィィ

 笑った?

 真結美さんは、凍りついた表情で僕を見て──そして笑った。

 真結美さんの笑みは、獲物を追い詰めた時、人間が本能的に溢す笑みに似ていた。

 獲物?──僕の事か?それとも別の……?でも──今この部屋には、僕と真結美さんしか──いない。

 考えれば考える程、訳が判らなくなってきた。冷や汗が、身体中から溢れてくるのが判る。

〝ここから逃げ出したい〟

 それが、僕の正直な気持ちだった。
 
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