くだらない短編集
飛び降り自殺





今日も、また僕は君を殺してしまう。





■飛び降り自殺■





世界が崩壊して逝く音がする。蒼が白を、塗り潰してしまう。夏の抜ける様な鮮明な空が、鏡に映る君の綺麗な瞳を突き刺してしまった。逃げ切れない。其処まで来ている。君が手を広げる。空を抱く、十字架の如く。手を広げる。

三、二、一と誰かの唇が動いた。

世界に飽和していく、白。風が下から唸りを上げて這い上がって来る。はためく白いブラウスに、僕は手を伸ばす事さえ出来ない。

君が振り向いて僕を見た。黒い瞳に決意が浮いていた。

少しずつ身体が傾倒していく。裸足とコンクリートがスローモーションで離れて行く。広げられた両手が翼のように、風を受け止める。ゆっくりと、ゆっくりと。白が視界から消えて逝く。もう戻らない命の行方も、告げぬまま。


君が振り向いて僕を見た。その顔は僕に酷似していた。




< 6 / 40 >

この作品をシェア

pagetop