バイナリー・ハート


 警備員と管理係に声をかけ、顔を見れば知れている事だが、規則上身分証を提示して、広域人物捜索装置へ案内してもらった。

 今夜、ユイの弟ソータを、迎えに行く事になっている。
 三日前ユイに告げられて、ロイドは即行で装置の使用申請を出し、自ら最優先で許可を出した。
 元々他に使用申請は出ていなかったので、特に問題はない。

 ソータがいれば、ユイとランシュが二人きりになる事はない。
 ランシュもユイに手出しはしにくいだろう。

 それにランシュは局にいた頃、外出許可が下りた後も、ほとんど外出することなく、局内に引きこもっていた。
 そのため彼の周りは大人ばかりで、同年代の友人はいない。

 特殊な環境で規則に縛られて育ったせいか、ランシュは感情の起伏に乏しい少年だった。

 彼の激しい感情を見せつけられたのは、二年前に死を目前にした病室で復讐を宣言された時が初めてだった。

 再会したランシュは、驚くほど感情が豊かになっていた。
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