バイナリー・ハート


 ゆうべ結衣が部屋に戻った時、ロイドは布団の端を抱きしめて、背中を向けていた。

 声をかけると「もう寝た」と、ふてくされたような声で返事をする。相変わらず時々子供っぽい。

 結衣は布団に潜り込んで、背中からロイドを抱きしめた。


「愛してるから、機嫌を直して」
「……別に、不機嫌じゃない」


 その声は、明らかに不機嫌だ。
 結衣は抱きしめる腕に、少し力を込める。


「ウソ」
「ウソじゃない」


 ロイドは結衣の腕をほどいて振り向いた。
 そして、結衣を抱き寄せ頭を撫でる。

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