バイナリー・ハート


 おそらく、ゆうべ邪魔された事だろうと、結衣はピンと来た。
 けれどそれを蒼太に言うわけにはいかないので、とぼけておく。


「さぁ? あんたのイビキがうるさかったんじゃない?」


 途端に蒼太は焦り出す。
 結衣が過去に何度も指摘しているので、自分のイビキがうるさい事は蒼太も把握している。


「げ! そっちの部屋まで聞こえた?」
「私は眠ってたから知らない」
「ランシュは? 聞こえた?」
「オレは聞いてないよ」


 ランシュの部屋は蒼太が寝ている結衣の部屋からは、一番離れている。
 たとえ起きていても、多分、聞こえないだろう。

 結衣たちの寝室は、蒼太の部屋の斜め前だが、ロイドもあれから程なく眠ってしまったので、聞いていないはずだ。
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