バイナリー・ハート
 ひとまずホッと息をついて、ロイドは顔を背けた。


「オレの事はいい。おまえに恨まれている事はわかっているからな」
「それはどうも」


 ランシュはこの二年間、復讐の事を忘れていたようだ。
 時が経てば、復讐など馬鹿げていると気付いて諦めるかもしれない。

 折を見て科学技術局に報告しなければならないが、しばらくはロイド自身も様子を見る事にした。

 改めてランシュの姿を見つめ、ロイドは不思議に思う。
 二年前と全く変わらない姿をしているのに、どうして誰にも見つからなかったのだろう。
 変装でもしていたのだろうか。

 それが気になったので尋ねると、ランシュは笑いながら答えた。


「病院と科学技術局には絶対に近付かないようにしてたし、あまり外出もしませんでしたしね。この辺りは局からは離れてるし、オレは運がいいんですよ」

「うちにいる間は変装しろ。おまえがここにいる事がバレたら、オレも困る」

「そうですね。髪の色を変える事にします」

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