騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
「それに話し方も友達の前だと少し違うんですね」
「あっ、やべ。素が出ちまった」
しまったというような表情を浮かべた流川さん。
「流川さん、猫被ってたんですか?」
「猫被ってたっていうか……麻菜ちゃんに素の俺を見せたくなかったんだ」
「え?どうしてですか?」
「だって、良い格好見せたいしね」
何だか、だんだんわたしと流川さんの距離が縮まっているような気がする。
そして、お酒のせいでもあるのか……
どんどん彼のペースに引き込まれていくような気がした。
「素のままの流川さんも十分良い人だと思いますけど……」
「良い人ってどういう?」
「うーん。紳士だし、優しいし」
「紳士、ねぇ。本当は俺、紳士じゃなかったりして」
見たこともない意地悪な顔をした流川さんがそこにはいて。
すっかり人称が「僕」から「俺」に変わった彼。
それがますますわたしの胸を高鳴らせた。