騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~



「それに話し方も友達の前だと少し違うんですね」

「あっ、やべ。素が出ちまった」


しまったというような表情を浮かべた流川さん。




「流川さん、猫被ってたんですか?」

「猫被ってたっていうか……麻菜ちゃんに素の俺を見せたくなかったんだ」


「え?どうしてですか?」

「だって、良い格好見せたいしね」



何だか、だんだんわたしと流川さんの距離が縮まっているような気がする。



そして、お酒のせいでもあるのか……

どんどん彼のペースに引き込まれていくような気がした。




「素のままの流川さんも十分良い人だと思いますけど……」

「良い人ってどういう?」


「うーん。紳士だし、優しいし」

「紳士、ねぇ。本当は俺、紳士じゃなかったりして」



見たこともない意地悪な顔をした流川さんがそこにはいて。


すっかり人称が「僕」から「俺」に変わった彼。


それがますますわたしの胸を高鳴らせた。





< 214 / 519 >

この作品をシェア

pagetop