騙されてあげる~鬼上司に秘密の恋心~
「あらら、行っちゃったわねー」
残念そうなセリフに聞こえなくもないんだけれど。
幸さんが言うと、何故か楽しんでいるように聞こえる。
「麻菜ちゃん、秀平には気をつけてた方がいいわよ。隙なんて見せたら、すぐ喰われちゃうんだから」
幸さんの言葉なんて耳に入ってこないくらい……
わたしは何度も何度も自分に言い聞かせた。
仲森さんに声をかけられるたび、触れられるたび、彼の姿を見るたび。
もっともっと近づきたいって思ってしまう。
その気持ちを抑えるように、何度も何度も。
わたしは自分に言い聞かせた。
ダメだって……これ以上彼に近づいてはダメだって。
でも……
ダメだって分かっていても……
もっと近づきたいっていう思いは……
この時、もうすでに止められなくなっていたのかもしれない。